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君の見た世界のすべて

君の見た世界のすべてが真実とは限らない

やさしさを包むようにチョコクレープを

「つくづく人生がつまらない・・・」男は薄く小麦粉や卵を混ぜた液体を熱く焼いた鉄板の上に落とす。落とされたそれは鉄板の上で焼かれて薄い生地になる。
チョコレートをチューブで何往復か塗り、生クリームにバナナ、そして少量のナッツを賭けてから、記事を3角に折りたたんでいく。

さっきからため息ばかりつきながらクレープを焼いているこの男は60歳目前でリストラにあい、退職金と貯金をはたいてクレープ屋を始めたのだが、この不景気のおり、なかなか経営が芳しくないようだ。
赤字ではないが、材料費や賃貸など引けば収入は雀の涙程しかない。

材料が値上げしても品物を値上げできないのだ。そんなことをしたら他の店に客を取られる事は明白である。

景気が悪い上にガソリンやらで電気代やらで材料となる果物やなんかも値上がりしている。
小麦粉なんかも輸入小麦の政府売渡価格が2011年4月1日より5銘柄平均で18%引上げられたことに伴い一時から値上がりした。
少々の値上がりでもバカにならない負担増だ。

ガソリンにしても消費税にしても現政権の政党が野党の折に値下げを公約に抱えていたではないか。
野党になった今、それらの公約はなかったような扱いになっている。
年金なんて、野党の時には威勢の良かった議員が大臣になったが、前よりもひどい状況に陥っている。
それなのに社会福祉を消費税で補填するなんて矛盾したことを言っているのが首相が一定いるのを見ると、投票したことが情けなくなる。

店が潰れたら生活保護がもらえるわけでもないが、売れてる芸人の母親が生活保護をもらっていると聞くと無性に腹が立つがどうにもならない。

そうこうしているうちにクレープは出来上がり、先程チョコバナナクレープを注文した少女に

「420円です。まいどあり!」

と言ったが、少女は自分の財布に目を落とし固まっている。

どうやら410円しか持っていないらしい・・・

ここで金が無いと言われても困ってしまうのはこちらも同じだ。

クレープ屋の店主は暫く考えて410円で売ることにした。

少女の満面の笑みを見て、それだけが救いのような気がした。

30秒後、すっ転んでクレープを地面に落とす少女を見るまでは・・・